Digital Decisioning -意思決定の自動化- (1)

先日、ハイパーオートメーションについての記事を書きましたが、そこで重要となってくるのは人間の判断を自動化すること。それによって単なる定型作業の自動化にとどまらず、判断(意思決定)を含めた作業の自動化を行えることになります。デジタルな(コンピュータ内で自動的に行われる)意思決定 – Digital Decisioning – です。

ここでの判断(意思決定)という言葉は、英語ではDecisionを使うことが多いですが、James Taylorは著書 Smart (Enough) Systems において、企業におけるDecisionは、次の3種類に分けられると言っています(図1)。

  • 戦略的意思決定(Strategic decisions)
    新工場建設や、M&Aなど経営判断にかかわるような意思決定
  • 戦術的意思決定(Tactical decisions)
    戦略的意思決定と次の運用的意思決定の中間に位置するような意思決定、たとえば割引方法、スタッフの配置、生産計画など
  • 運用的意思決定(Operational decisions)
    レコメンドなどの商品提案、保険加入などの適格性審査等々

下図のように厳密に分けられるというわけでもないですが、Decisionに対するひとつの視点としては有効でしょう。

出典:Taylor James & Raden, Neil (2007). Smart (Enough) Systems. Prentice Hall.

意思決定の自動化といった場合、このうち、運用的(業務上の)意思決定がボリュームも多く(たとえば顧客との接点が発生するたびに意思決定も発生)、何度も繰り返されるので自動化に適したものと言えましょう。また戦術的な意思決定も、月次や週次などで決定され繰り返されるものも多いので、必ずしも完全に自動化をしないまでも人との協働作業で意思決定をなすことが考えられます。逆に戦略的な意思決定はそれほど頻繁になされるわけではなく、定型的なものでもないので、あえて自動化を目指すものでもないということになります。

運用的意思決定の自動化は、非常に大きなビジネスインパクトを持ちます。経営レベルの戦略的な意思決定はもちろん大きなビジネスインパクトを持ちますが、それとは別な視点、すなわち意思決定量の多さからくる圧倒的なビジネスインパクトを持っています。すでにほぼ自動化されている例になってしまいますが、ECサイトのレコメンド機能とか、クレジットカード取引の不正検知とか…。自動化されていなかったとしたら取引量に大幅な制約が発生し、ビジネスが、量というよりも質的にも変わってきてしまうことが予想されます。

もっとも運用的意思決定もピンキリで、自動化してインパクトありそうなものと、それほど期待できなさそうなもの、いろいろあると思うのですが、意外に職場に転がっているのではないでしょうか。たとえば「あの取引先は○○だから△△しておけ」とか…。これも立派な運用的意思決定です(まあ、正確に言うと、ある運用的意思決定を構成するひとつのルールになりそうですが)。自動化のネタだしにちょっと考えてみるのもいいかもしれません。

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