オントロジーな製品

先日、あるツールのセミナーに行ってまいりました。AGRAという名のデータ(仮想)統合ツール。

データ統合といえばEAIとかETLといったような3文字略語がすぐに思い浮かぶと思いますが、このAGRA、これら巷にあふれる3文字略語ツールと何が違うのかと言うとデータ統合/交換のハブとしてオントロジーを据えたところ。企業のさまざまな場所に散らばっているDBに対し、物理的なカラムの管理や論理的なモデルを管理するリポジトリは今までにも存在していたかと思います。しかし、このツールではより上位にオントロジーをおき意味を明確にすることにより、さらに論理モデルも統合しようとしています。その結果、既存のDBをそのまま活かしながら仮想統合された巨大なデータベースを提供できるというわけです。

現実問題としてこういったオントロジーを軸としたデータ統合が一筋縄でいくとは思えないですが、ただ目指すところとしては間違っていないのかなあと思います。実際、データの統合としてよりどころとするのは結局のところ厳密な言葉の定義しかないわけで、それを考えたらやはりオントロジーというところは避けて通れないのではないでしょうか。

このツールのセミナーを聴いていて以前読んだエンタープライズ・セマンティックWebの記事((1)(2))を思い出しました。この記事はもう4年ほど前の記事でちょっと古いですが、現在の動向を見ていると、今回のAGRAといい、以前ブログに書いたMetamojiのOntogearといい、ようやくオントロジーを標榜したツールが製品化されるようになってきたのを感じます。時代はシンタックスの世界からセマンティクスの世界に突入していくのでしょうか。

オントロジー(2)

そもそもビジネスルールは、その if 部分とワーキングメモリ(一時記憶)の中のファクトとが「パターンマッチ」されることで実行が進んでいくわけで、ファクトの「パターン(文字列)」はきちんと規定されている必要があります。さらにファクトの意味が同じファクト(パターン・・・文字列)に対してブレてしまうと、それぞれのビジネスルールの意味も変わってきてしまうので、ファクトの意味についても厳密に定義されていなければなりません。

ファクトのパターンとその意味が厳密に規定されたモデル・・・ファクトモデルは、このようにビジネスルールのシステムの基盤として非常に重要な存在です。さらにビジネスルールを用いたアプリケーションシステムが多数存在する、「企業」のレベルまで考えを拡げてみましょう。すると、これらビジネスルールの基盤となるファクトモデルは「企業」のレベルで共通のものになっていないとアプリケーションシステム間の相互運用性が保証されないことになってしまいます。

さて、(1)の項でファクトモデルがオントロジーにあたると書きました。すると「企業」のレベルで共通のものになっているファクトモデルとは、「企業」オントロジー・・・エンタープライズ・オントロジーということになります。

実はエンタープライズ・オントロジーというのは、オントロジー研究の中で昔から言われており、古くはエジンバラ大学の応用人工知能研究所研究トロント大学のエンタープライズインテグレーション研究所TOVEプロジェクトなどから、最近は成書も出ていたり、セマンティックWebの観点から注目されたりしてします。

ビジネスルールの世界は実践重視の世界なので敢えてオントロジーという言葉はあまり出てきませんでしたが(この辺の事情は、たとえばBusiness Rules in the Semantic Webなどを参照)、昨年あたりからEUのONTORULEプロジェクトなどというのが出てきたりしています。このプロジェクト、ONTOlogies meet business RULEs という名前が示すとおりオントロジーを基盤としてビジネスルールを用いたシステムを具体化していくプロジェクトです。いよいよオントロジーがビジネスルールの世界で俎上にのぼってきたということでしょうか。



オントロジー(1)

元ジャストシステム社長の浮川さんが作った会社MetaMojiからOntoGearというオントロジー工学をベースにしたツールが公開されるとのこと。

元ジャストシステム浮川氏のMetaMoJi、初の製品となる「OntoGear」を5月に公開

久しぶりに「オントロジー」という言葉をプレスリリースなどで見て勉強しなければ・・・と思った次第。というのも、この「オントロジー(ontology)」、ビジネスルールアプローチやBRMSと非常に関連がありまして・・・(もっとも「OntoGear」というツールはBRMSやBRAというよりもむしろ応用人工知能的なツールです)。

「オントロジー」とはもともと「存在論」という意味の哲学用語ですが、コンピュータの世界で使われるときには物事・概念の間の関係性を記述したモデルとでも言うのでしょうか。イメージ的には、用語間の関係としてみたクラス図とか概念データモデルというと近いかもしれません(実際のオントロジーの実例としては「法造~オントロジー構築・利用の研究サイト~」などを見てもらえばよいかと)。

で、オントロジーをビジネスルール(BRA、BRMS)の世界に持ってくると、これが実はファクトのモデル(fact model)になるわけです。実際、ビジネスルールを書いていく上での基盤となるファクトモデルは、ビジネスルールが対象とするドメインのオントロジーといえます。たとえば企業活動というドメインを考えた場合、まず用語としては「顧客」「注文」「従業員」・・・などがあげられ、その関係性としてのファクトは、「顧客は注文を出す」、「従業員には性別がある」・・・などといったことになりましょう。

(この項続く)