オリンピック選手のトレーニングを一般に – Athletes’ Performance –

ロンドンオリンピックも終わり、一時の狂騒も、銀座でのメダリストパレードでようやく一区切りつきました。私はそれほど頑張って見ていたわけではありませんが、特に女子バレーの中国戦。第5セット(^^;)から見た私はそれまでのセットのスコアを見て驚きました。スコアがすべてを語っていたというか…。

ところで、最近のスポーツ界というのは、ITなしでは考えられないようになっていますね。試合などコートの外でもデータ戦と言えるようなバトルが繰り広げられています。

DBオンライン的ロンドンオリンピック評―過去最高メダル獲得数を支えた、さまざまなデータ活用

フィットネスまたアスリートの練習・トレーニングは、最新の科学的見地から、一昔前には考えられなかったような方法が取り入れられていたり、全くノウハウのかたまりといった感がありますね。

スポーツ、未開の大陸

なんていう連載を見ると、ICTの対象としてスポーツ分野は結構これからの分野かも…というわけで、今回も事例を…

IBMのJRulesを用いてアスリート向けのトレーニングプログラムノウハウをルール化し、一般向けにもスケールアウト(スケールアップ?)した話。

BRMSというと、日本だと金融・保険関係の話が多くて…確かに事例は多いのは事実なんだが…何だかなあと思っていたら…IBM JRulesのサクセスストーリーとして、Athletes’ Performance 社の事例を見つけました。

Athletes’ Performance社

米国アリゾナ州フェニックスを本拠とするAthletes’ Performance社は、プロフェッショナルなアスリートや選抜されたアスリート向けに独自の総合的なアプローチで運動機能トレーニング、栄養、理学療法を提供しているパイオニアの企業であり、またこれらのノウハウを一般向けにも提供している。アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、テキサスにトレーニング施設を持つほか、これらメニューのオンサイトでのサービスも行っているとのこと。

ビジネスの要求:
現在、スプレッドシートに散在している専門ノウハウや、行動科学、フィットネス、栄養、理学療法それぞれの第一人者の知識を コストをかけずにコード化・自動化することで、パーソナライズされたフィットネス・プログラム製品を、より大きな健康増進(wellness)のマーケットに投入していきたい。

ソリューション:
IBMのBRMS WebSphere ILOG JRules を用いて、トレーニングや栄養ノウハウをルール化し、個々の顧客に合わせてカスタマイズされた健康増進のためのプログラムを提供する。

結果:
・顧客の定着率が92%にものぼるようになった。
・1人のトレーニングスペシャリストが一度に16人の顧客を相手にできるようになった。
・長年の経験がより多くの人々に提供できるようになった。

もともと Athletes’ Performance 社は、プロフェッショナルやオリンピック級のアスリートにハイレベルな支援を行っていた企業ですが(たとえば、今シーズン、サッカーの英国プレミアリーグのエバートン(←開幕戦で香川のいるマンUと戦いましたね)をサポートしているとのこと)、このハイレベルなトレーニングノウハウを一般向けに普及させ、アマチュアのアスリートたちのマーケットに参入していこうとしたもの。

当然のことながら、そのためには、すでに世間で評価を得ているハイクオリティなトレーニングノウハウを、レベルを落とさずに幅広い層にスケールさせていくことが必要になってきます。そしてトレーニングスペシャリストの数が限られている中、これは既存のトレーニングプログラムの多くは自動化していかなければならないことを意味しています。

この自動化に際して選択されたのが、ルールベースによるアプローチ。専門家たちの高度なノウハウを、ビジネスルールの形式で表現して実装するために IBMのBRMSであるIBM WebSphere ILOG JRules が選択されました。

JRulesによるシステムを配備したことで、すべてのトレーニングメニューの「おすすめ」が直ちに、エクササイズマシンのタッチスクリーンや、モバイル端末、Webを通してアクセスすることができるようになりました。現在、社内のフィットネス専門家により過去編み出されExcelのスプレッドシートに蓄積されてきた知識、経験から、抽出された36000ものルールがJRulesのシステムに実装されています。

この JRules によるシステムは、オープンソースベースの SOA/REST の基盤にのっており、ルールの修正反映・デプロイを迅速に行うことができます。日々の評価から、ひとりひとりの顧客の情報を収集し、会社独自の方法論、コア・パフォーマンス・トレーニングメソッド(Core Performance training methodology) に照らし合わせて、それぞれカスタマイズされたプログラムを作成します。この コア・パフォーマンス処方箋エンジン(Core Performance Prescription Engine – CPPE -) は、身体の状態やペース、スケジュールを考慮に入れ実際のトレーニング方法に対してリアルタイムで修正をかけます。

また、このシステムによって、フィットネス・スタッフが常時トレーニング情報に磨きをかけていくことが可能となりました。一人のITスタッフの支援のもと、専門のトレーナーたちのチームがルールの修正をすばやく行い、その結果をただちに世界中の顧客に向けて展開することができるようになりました。

このCPPEは最適で一貫した身体トレーニングを世界中にリアルタイムで届けることのできる世界で最初のルールベースのシステムであり、またこのことにより顧客は、Athletes’ Performance 社のどの施設でも同じ、高品質で一貫したサービスが受けられるようになりました。

また、通常フィットネスクラブの顧客定着率は年間で60%程度を行ったり来たりしているものなのですが、Athletes’ Performance 社は、何と年間で92%を誇るようになっています。

さらに、このシステムにより健康増進(wellness)のガイダンスが自動化されたことで、一人のトレーナーがクオリティを落とさずに一度に16人までの顧客に対応できるようになりました。

以上、見てきてみると最近の保険などでの事例とくらべ、何というか…オーソドックスなエキスパートシステム…的な…事例です。

このシステムがうまくいっているというのは、私の想像するに

・ルールの数は多いが、それぞれのルールは単純であり(たとえば脈拍が○○以上だからちょっとペースダウン云々?) 、他のルールに長く連鎖して動く(条件が○○だからゆえに××、××だからゆえに△△、△△だから結果□□…など)部分がない。

→したがって、ひとつひとつのルールが独立していて修正変更がしやすい。

・さまざまなケースで同じルールが適用できる。

→したがって、ルールの適用できる部分については自動で処理でき、人間の専門家は、ルールに当てはまらない例外的なケースへの対応に集中できる。機械的に対応できる部分を自動化されたルールに任せることで、いわばレバレッジの効果が生まれてくる。

・現場を知っているトレーナー自身でルールを変更できる仕組みを作った。

→ルールによって自動化ができると言っても、ルールそのものが最適な結果を導いているかは今までの経験や理論以上の保証がない。したがって、その結果はサンプリングするなりして常にルールに磨きをかけていく必要があります。その際、ITの専門家を通していると変更のスピードが落ちるだけでなく、仕様の伝達ミスなども発生しかねず、いろいろな意味で変更のコストが大きくなってきます。現場の専門家自身が変更できるようになり変更がより容易に行えるようになります。

さて、こんな事例が出てくるようになると、センサーデータを駆使してリアルでアドバイスをするようなCEPを使った事例などでてきそうな気もしますね。CEPではないですが、

などの事例も出てきています。
ヘルスケアなどは今後伸びていく分野だと言われています。そしてそのヘルスケアにBRMSが活用されてきています…ちょっとおもしろいと思いませんか。

コメント

  1. […] のモニタリング装置で血圧や脈拍数、体温などを随時モニタリングしていたり、さらには先日の投稿の後ろの方でちらっと紹介したBodyMediaのようにリストバンドにモニタリング装置をつけ […]

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