以前、このブログでBRMSの市場について取り上げた記事を書きましたが、最近USでのBRMSの動向について、ブログやレポートを見る機会があったので、個人的な視点含めごく簡単にまとめてみました。(ちなみに、ここで言っているBRMSとは、日経コンピュータの例の記事で言う「ビジネスルール特化型」のことなので念のため。「オールインワン型」はここでは含まれていません)
USのBRMS市場は2008年から2010年にかけて年2ケタ成長を続けており、すべての開発ツールの市場の中でも成長率の非常に高い市場のひとつとなっています。その規模は昨年で軽く6億ドルを超える程度になっていると推計されています。
また、ここ数年合併・統合が多くみられるのもこの市場の特徴です。ビジネスポリシーやルールの急速な変化に合わせて、システムも変更して行こうとすると、BRMSのようにビジネスルールのライフサイクル全般にわたって統合的に管理するツールが必要になってくるのでしょう。大手のベンダは、そのようなBRMSの潜在力に着目し、有望なBRMSベンダを取り込んでいく傾向にあります。Ilogを買収したIBM、HaleyはOracleに、YasuがSAP、InnovationsがBoschに、そして最近ではCorticonがProgressに買収されています。
さて最近のBRMSベンダの状況ですが、ある程度の地歩を保ちながら大企業向けなどで比較的元気のあるのは、以下のベンダー。
- IBM(旧Ilog JRules)
言わずと知れたBRMSの巨人。BRMSは、比較的細かい制御が可能な開発者寄りの製品と、細かい制御よりもむしろ簡単に扱えることに重点を置いたビジネスユーザ寄りの製品とがあります。この分類でいえば、IBMのBRMSは、古くからあるだけに、もともとは開発者寄りの製品ではありますが、ビジネスユーザ向けの機能も充実させてきており、幅広い範囲に受け入れられるようになってきています。ただ、IBMはこのところBRMSとしての機能よりもBPMやCEPとの統合に力を入れている様子です。 - Red Hat JBoss (JBoss Drools)
もとはオープンソースのJBoss BRMSは、私は勝手に貧者のJRules(!)と呼んでおり、ここ数年特に、基本機能がかなり充実してきました。ただどちらかというと開発者向けの機能の方が優先で開発され、後からデシジョンテーブルやDSLなどのユーザ向け機能が後から追いつくという感があります。 - InRule Technology (InRule)
.Net向けのツールの最右翼。.Netには、IBM Ilog、Corticon、FICOなど対応しているツールは多いですが、その大部分はJavaをメインのターゲットにしているツールであり、.NetはJavaツールの.Net対応版として提供されています。その中でメインターゲットとして.Netを対象としているInRuleは、BRMSとして貴重な存在です。 - Bosch Software Innovations (Visual Rules)
BRMSの欧州の雄(Ilog JRules も元々はフランス生まれですが…)。グラフィカルなルール表現が特徴のVisual Rules。欧州では大きく伸びているようです。 - Progress (Progress Corticon)
Ilogなどに比べれば新進といえますが、最近の伸びは目を見張るものがあります。もとはユーザ(医者)が中心になってベースを設計しているので、ビジネスユーザ寄りの機能が充実した製品です。Corticonは、上記InRuleやBoschなどとともに顧客を非常に増やしています。
その他BRMSの有名どころでは、
- FICO (BlazeAdvisor)
最近はBRMSプラットフォームというよりも、ハイエンドのデシジョンマネジメントの「ソリューション」を提供することに力を入れているのではないかという見方が・・・。
またOracleも自前のBRMSを持っています。
- Oracle
Oracleは、実は2つのルールエンジンを持っていて、ひとつは買収したHaley系のOracle Policy Automation、もう一つは Jess がベースとなっている Oracle Business Rules です。このうちOracle Business Rules はOracle SOA Suiteのコンポーネントとしてのみ提供されているようです。
そして、新進気鋭と言える注目ベンダとしては
- OpenRules
Excelなどの表形式でルールを記述するオープンソースのBRMS。ビジネスユーザ寄りの製品として機能が充実してきているようです。 - SparklingLogic
ベテランのルール専門家がその経験を生かして開発したツール。ビジネスユーザ寄りの機能が充実しており、またReteで有名なForgy博士も顧問として名を連ね、新たなアルゴリズム Rete NT を採用しています。
ほかに、BPMなどの他の機能とともに提供されたりする(SAP, Pegaなど)ことも多く、BRMSのベンダは、ここにあげた以上にたくさんあるので、下記のリンクなどを参考にしてみてください。
ブログ
Business Policy and Rule Vendor Round Up
レポート
Gartner, Vendors in the Business Rule Market, 2012
Forrester, Market Overview: Business Rules Platforms 2011
The Business Value of Business Rules Management Systems
Sponsored by: IBM
コメント
Thank you very much for the kind words. We really believe in innovation, that will help spread the adoption of those technologies, and deliver on the premise of empowering business analysts. We are honored that you recognize our work in Decision Management / BRMS.
[…] 以前の記事で、FICOのBlaze Advisorの紹介をしましたが、何といってもやはりBRMSの老舗だけあって、実績についてはIBMのJRules(Websphere Operational Decision Management)と並ぶものがあります。 […]